
なぜ蓄電池シミュレーターを作ったのか|訪問販売で欲しかった判断基準
我が家には太陽光パネルがあり、蓄電池の訪問販売や電話勧誘が毎月のように来ました。「今なら安くできる」と言われ、他社の見積もりを見せると「それは高すぎる」と言われる。それでも最後に出てくる金額はほとんど変わらず、その場で契約を求められました。
蓄電池そのものを拒みたかったわけではありません。電気代は下げたいし、オール電化の家なので停電への備えも気になります。困ったのは、目の前の提案を自分の家の数字で確かめる基準がなかったことでした。
その基準を買い手側に置くために作ったのが、このサイトの蓄電池シミュレーターです。
営業の説明だけでは埋まらなかった3つの空白
見積もりを受け取っても、次の3点はそのままでは分かりませんでした。
営業担当者が示す試算が誤っているとは限りません。ただ、売る側の試算は、前提の置き方によって結果が変わります。発電量、将来の電気料金、ローン年数、補助金をどう置いたのかが見えなければ、買い手は数字を検算できません。
自分で電気代を調べて計算するのは手間がかかり、数時間かけて話を聞いた末に、結局なにも決められない。それを何度も繰り返しました。「安くしました」という言葉ではなく、自分の検針票から判断できる道具が欲しかったのです。
運営者について売る側の試算を、買う側が検算できる形へ
シミュレーターは購入を勧める答えではなく、見積もりへ質問を返すために作っています。
- 前提が見えない 営業試算の発電量、単価、ローン、補助金の置き方が分からない。
- 前提を開示する 入力、計算式、仮の価格、分からない範囲を記事と画面で示す。
- 自宅の数字で比べる 12か月の電気代・買電量・売電額と、実際の見積額へ置き換える。
- 「見送り」も残す 容量や家計負担が合わなければ、買わない判断も結果として扱う。
最初に決めたのは「見送り」も出すこと
シミュレーターを作るうえで最初に決めたのは、蓄電池を買わせる計算機にしないことでした。入力した家庭で使える電力量が少ない、FIT期間が残っている、ローン返済に対して削減見込みが小さい。そういうときは、特定の商品を勧めず「今は見送りも選択肢」と表示します。
これは、蓄電池に価値がないという意味ではありません。停電対策や環境面の価値は、家計の試算だけでは測れないからです。経済効果が小さいときにそれを隠さず、お金以外の価値にいくら払うかを自分で決められる状態にすることを優先しました。
現在の形になるまで
このサイトの履歴をたどると、シミュレーターは一度に完成したのではなく、判断材料を少しずつ増やしてきたことが分かります。
| 時期 | 主な変更 | 買い手にとって増えた判断材料 |
|---|---|---|
| 2026年6月11日 | サイトの初期版を作成 | 訪問販売の提示額を自分で確かめる入口 |
| 2026年6月20日 | 製品データを一覧化 | 容量・方式・負荷の違いを機種名と結びつけて確認 |
| 2026年6月21日 | 現在のシミュレーター画面の基礎を追加 | 直近12か月の電気代・売電額から試算 |
| 2026年6月28日 | 計算の仕組みを表示し、用語を整理 | 「理想価格」ではなく、前提を含む「シミュレーション価格」として表示 |
| 2026年7月8日 | 用語集を追加 | 検針票・見積書の言葉をその場で確認 |
| 2026年8月6日 | 価格前提と限界を独立して公開 | 計算値を市場価格と誤解せず、できないことまで確認 |
変更のたびに増やしたのは、派手な購入訴求ではなく「この数字は何か」「何が分からないままか」という説明です。
シミュレーターが計算していること
現在のシミュレーターは、入力された直近12か月の電気代・買電量・売電額を使い、次の順で計算します。
- 空欄月があれば季節パターンで補い、年間の使用状況を推定する
- 太陽光の余剰電力と買電量から、毎日使い切りやすい容量を求める
- 公開中の57機種から、その容量に近い候補を表示する
- 電気代の削減見込みとローン返済を同じ月額で並べる
- 20年間の累計を、現在のままの場合と導入した場合で比べる
結果画面の「シミュレーション価格」は、一般的な販売価格を言い換えたものではありません。入力した家庭で、設定したローン期間の返済を含めても月々の総支出が増えにくい金額を逆算した目安です。
一方、機種を選んだときに価格欄へ入る金額は、容量帯から計算した仮の前提値です。この2つは役割が違います。境界と全57機種の計算値はシミュレーターの価格前提で公開しています。
入力内容を外部へ送らない設計
電気代や売電額は、生活状況が見える数字です。そのため計算はブラウザの中だけで行い、入力内容をサーバーへ送るフォームや会員登録は設けていません。
再訪時に入力を復元できるよう、フォームの内容は利用者のブラウザ内に保存されます。共有パソコンや共有タブレットで使う場合は、利用後にブラウザのサイトデータを削除してください。
道具が出すのは「答え」ではなく「次に聞く質問」
シミュレーターは、屋根や配線を見ません。将来の天気や電気料金も確定できません。施工品質、保証対応、補助金の採択も判定できません。詳しい境界はシミュレーターで分かること・分からないことに整理しています。
それでも、何も基準がない状態とは大きく違います。
- なぜこの容量なのか
- 工事費込み総額はいくらか
- ローン総支払額はいくらか
- 売電の減少を含めているか
- 同じ条件で他社はいくらか
結果を見れば、営業担当者や施工店に聞くべき質問が具体的になります。
そこで回答を書面でもらい、同条件の見積もりを複数社から取る。シミュレーターは契約の代わりではなく、持ち帰って比較するための出発点です。
まとめ:買い手が自分の基準を持つために
訪問販売を受けたときに欲しかったのは、「買うべき」「買わないべき」と代わりに決める人ではありませんでした。自分の電気代と見積もりを同じ場所に置き、納得できるまで考えるための基準でした。
このサイトは、そのとき欲しかった道具を、同じように迷っている人が使える形にしたものです。結果が購入でも見送りでも、営業の期限ではなく、自分の数字で決められることを大切にしています。